小 川 山
 
廻り目平の登山口はカラフルなテントの花が咲き、大きなザックや、カラビナ、ヘルメットを持った人達で活気に溢れて
いた。だが、一歩小川山の登山道に入ると西股川のゴーゴーとした沢音だけで、人気は全く無かった。いきなりの急
登、両側の満開のミツバツツジに出迎えられる。山頂まで長丁場だ。焦ってはいけない、はやる気持をおさえて、ゆっ
くりと歩こうとおもった。やがて、岩場にさしかかると、木の朽ちかけた危なげな梯子が現れた。巨岩の間を縫うように
消えかけたペンキやリボンを目当てに歩く。これは、想像していたより手強い山だなと気を引締めた。
 およそ1時間で展望台に到着。大きな岩に攀じ登ると、谷を隔てた山肌を轟音を響かせ一気に流れ落ちる唐沢の滝
が、素晴らしい。南には以前金峰山の途中から見たニセ瑞牆山?と命名した岩峰群が屹立している。
道はやがてしゃくなげの密生林に変り、期待していた花は残念ながらいくつもなくがっかりだ。花芽は少なく来年は
花のトンネルが見られるのだろうか。とにかくしゃくなげの木は多い。登山道はその巨木から枝が張り出ていてともす
ると体は押し戻されてしまいそうになる。しゃくなげ林からシラビソやコメツガの原生林に変り、あたりに広がる青々し
た苔の美しさ。空気はしっとり、冷たくひんやりとして木々の根本はふわふわの絨緞のようだ。その隙間から冷気が
漂い、山の空気を透明に換えているのだろうか。
 山頂は先程私達を追い越していったグループが休んでいた。しゃくなげの大木で展望は悪いが、西に行ったところ
から金峰、瑞牆山がすぐ目前に望むことができた。山頂にいたる登山道は金峰、瑞牆山以上に面白味のある山だと
思う。百名山の二つの山に隠れて小川山は今も不遇の山に変りは無いようである。
 重い足を引きずるように下山、前を行く男性が美味しそうなタラの芽を持って、テント場に消えていく。あちらこちらで
夕餉の饗宴が始まろうとしてしている。その様子を羨望の眼で見ながら、私達は帰宅を急いだ。



                       
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