H13年4月29日〜5月3日
女だけの還暦記念山行ということで、年齢を考慮し充分なゆとりをもって計画したので、空港、 乗船には、かなりの待ち時間があった。しかし、同世代の私達は,話題につきる事は無く無駄 な時間は、全く無かった。 屋久島は全島が、花崗岩からなり山容は豪快そのもので、川には巨大な花崗岩のスラブや滝 や淵があり垂直分布をなす植物群は麓に照葉樹林、中腹から山頂近くには屋久杉の巨木が 生育し、さらに高層湿原まであるという。こうした屋久島に以前から憧れて、いつか行ってみた いと思っていた私達は女5人の屋久島還暦山行を計画した。 林芙美子が「1ヶ月ほとんど雨、月のうち35日雨・・・」と「浮雲」に書いているが、もし雨だっ たら長丁場を歩けるだろうかと不安を胸に重いザックを背負って宮之浦港に着いた。 大きなザックで意気揚々と屋久島に さくらつつじ 私達は白谷沿いの遊歩道から新高塚小屋泊まりで宮之浦岳に向かう。白谷川の花崗岩を 削る清流が豪快な音を響かせ、川岸にサクラつつじの淡いピンクの花が彩りを添えてる。沢音 が遠くなる頃、遊歩道とひと味違う落ち葉と苔の道に変わった。 樹林は原始の姿そのままで、静けさをやぶるのは小鳥のさえずりだけ。根元に抹茶をまぶし たような苔の感触を愉しみながら一歩また一歩と原生林に踏み込んでいく。 屋久島の苔むす森の中をのんびりと奥へ奥へ進む 鬱蒼たる森はいつの間にか霧に包まれ幽玄の世界に変わっていた。道の両側に杉の大木 にはヒメシャラ、ナナカマド、シャクナゲが絡んだり着生したり、森全体がしっとりと、ますます緑 濃く、私の体まで染まってしまいそうだった。 ウィルソン株で昼食をと思ったら、すっかり昂揚した5人は登山口に向かう途中でゲットする はずのお弁当をすっかり忘れていた。でも、昨夜の民宿のバ−ベキュ−で出たおにぎりを、残 してはもったいないとザックにしのばせて来た。オバサン根性もたまには役立つのだ。 やがて樹齢7200年とも言われる世界最大の縄文杉に対面した。想像以上に大きく逞しい 生命力に改めて感動した瞬間だった。江戸時代には見た目の悪いごつごつした杉は伐採を免 れたそうで、縄文杉はその代表的なものという。杉も美人薄命だったようだ。 樹齢7000年縄文杉 「浮雲」にも登場するトロッコの軌道跡 屋久しかがお出迎え 新高塚小屋に到着。途中では3人の登山者に会っただけだったので空いているかと思えば、 淀川口からの登山者であっという間に溢れるかえってしまった。 翌朝、あわただしく朝食をすませ、薄明るくなった道を山頂に向かう。あたりの風景は昨日と は一変して、ヤクザサの中に枯木やシャクナゲ、満開の白いアセビの花が、そこここに見られ る。 巨岩が点在する宮之浦岳山頂付近 降雨時登山道が水の通り路となるのだろう。雨の多い土地ゆえ登山道は見事なまでにえぐら れ両脇の笹や木の根に掴まってやっと登る大変歩きにくい道になった。 焼野三叉路からは、永田岳と宮之浦岳が、眼前に迫り、巨岩がが点在するようになる。ヤク シマシャクナゲが群生しているので、花の盛りはさぞ素晴らしい景観であろう。 1935mの九州最高峰、宮之浦岳に到着。山頂からは海に浮かぶ7つの島が見渡せるはず だが、今日は重畳たる山並みしか見えない。もっとも、海まで望めるのは一年に数日もないそ うだ。 あと一息だ! 山頂をバックに 還暦 バンザーイ!! 大勢の登山者で賑わう中、赤いバンダナに赤シャツを着込み、「私達還暦山行なんですよ」 「エ−ッ! 若いですね」という期待通りの会話に満足して、記念写真におさまった。
月日が経つにつれ、あのゆっくり歩いた原生林が鮮明に思い出され、人生の節目に相応し い山行だったと満足している。 (白山書房 「山の本」 2002年夏号掲載) おまけの観光 翌日の観光はラッキョウほどの雨粒に見舞われ、そのため千尋の滝、大川(オオコ)の滝 は私たちを凄い迫力で迎えてくれた。 ガジュマルの木 千尋の滝 くわ科の常緑高木で幹や枝から多数の木根を 垂れ地中に入り、支柱根となる
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