塩見岳(南アルプス)
        
(3052m)
                                      
2003.7.6〜7(前夜発)



コースタイム
一日目
ゲート駐車場5:45→登山口6:37→豊口コル7:50→分岐9:00〜9:10→
三伏峠小屋9:40〜10:05→本谷山山頂10:20〜10:35→13:45塩見小屋14:05→
塩見山頂西峰15:20→東峰15:30→塩見小屋15:45
二日目
塩見小屋6:00→本谷山7:40〜7:55→分岐8:20→小屋8:45→三伏小屋9:30〜9:40→
登山口12:00〜12:10→12:50

     冷涼多雨の独特の気象の南アルプス、しかも梅雨期の3000m峰、雨具、登山靴に防水スプレ
    ーを惜しげなく吹きつけ、ザックの中も雨対策を入念に備えた。何年も前から憧れていた塩見岳だ。
    雨予報もなんのその絶対行くぞォと意気込みもよろしく集合場所に車を飛ばした
     
       仮眠する宿泊地に到着すると無慈悲な雨だった。
    幸いにも広いトイレがありこの中と車に別れ仮眠した。もちろん私は車でした。


       前夜の安定剤が覚めやらず、登山口から三伏峠までの3時間の記憶は全く薄れていた。
    帰路に丸太の梯子の多さに驚いのだ。ただ、はっきり覚えているのはしっとりした樹
    林に広がる可憐な白いオサバグサの群落。以前からこの花との出会いを楽しみにして
    いたが、思いがけず出会った花たちに大きな感動を与えられた。

    登山口から日本一高い峠“三伏峠”までの3時間は長く長くきつく感じた。
    ここから塩見小屋まであと4時間の行程と聞き、私はへなへなと座り込んでしまった。
    (なんてこったぁ)
    ここからは1時間と思い込んでいたのだ。初日の歩行は7時間と承知していたにも拘らず、
    なにを勘違いしたのだろうか。今思うとこれも朦朧とした意識の中の悲しい錯覚だったの
    だろうか。それとも大ボケ?とにかく気を入れなおして、頑張るしかない。

    三伏峠からは歩き易い道が続き、本谷山付近のお花畑に元気付けられた。恐れを感じ
    た4時間は幻想的な美しい原生林に私はのみ込まれて時を忘れてしまったようだった。

      塩見小屋に2時前に到着した。回復傾向の空模様と相談し、夕食までに、このまま山頂
    を目指すことにした。小屋から天狗岩の南を巻き、登山道は今までと違って浮石のガレ
    た岩場に変った。落石に注意しながら、慎重に歩く。岩礫には夏の高山植物が勢揃いで
    出迎えてくれた。特に目を引いたオダマキの鮮やかな紫の花二輪。重い足を引きずるよ
    うに三角点のある西峰に到着した。そこから彼方に東峰が幻のように浮かんでいた。
    もうバテバテの私達、でも何とか東峰まで行きたいと思った。その時、一瞬ガスが切れ、
    東峰の全容が現れた。すぐ目の前に屹立とした峰に、大歓声があがった。展望こそ恵まれ
    なかったが、憧れの塩見岳の山頂に立ち、これ以上何も云うことはなかった。
    難所の岩場を過ぎ、振り返ると青空が広がり、山頂をくっきりと望むことが出来た。

     塩見小屋のトイレは、自然環境保護を考慮し、トイレ袋で排泄物は自分で処理
       すると聞き恐怖を感じていた。私は、それだけで塩見を諦めようと何度も思った。
       ところが、真っ白のポータブルトイレは悪臭は全くなく清潔感があり、
       一枚200円の使い捨てトイレ袋になんの抵抗もなく素直に馴染めた。
       トイレにこだわりを持つ私はすべての山小屋がこのようになれば良いと思った。
 
     夕食後、小屋の背後に天狗岩と鉄兜状のどっしりした塩見岳、間ノ岳に続く稜線が雲
    海に浮かんでいた。今夜の宿は小屋の別棟を独占、寝具は新しく、快適な一夜が約束さ
    れた。行動時間11時間が効いたのか8時間も山小屋で熟睡したのは初めてだった。小
    屋の主は心臓病を患って2年後はここを去ると言う。温和な主にいつまでもこの小屋で
    頑張って欲しいと思った。
 
     前日に山頂を踏んだので今日は下山するだけ、気分は絶好調で足取り軽く歩き始め
    た。しかし、残念ながらそれは、休憩地と思しき場所に捨てられたゴミで意気消沈してし
    まった。使い捨てられ錆びたガスコンロ2つと残飯で汚れたビニール袋に、美しい原生林
    の悲鳴が聞こえるようだった。
    え−っそれどうしたかって?もちろん拾ってきましたよ。そこから5時間余臭いゴミ袋を
    下げての歩きは辛いものがあり、途中で谷に放り出そうかと思ったが大事に持ち帰りま
    したよ。

    帰宅後ザックが乾かぬうちに次回の山行の仕度を始める。「元気はすべて大姉に持っ
    ていかれた」と、ひ弱な3人の実妹たちの言葉を思い出しながら・・・・・


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